ケモノのアヴァターラが出現したとき、それがバイシという存在様態であると分かると、私たちは興奮と緊張に包まれる。バイシだけがヒトの存在を明らかに意識し、私たちに何かを訴えかけている。それはケモノがヒトとの“外交”を試みるために生み出した、特別なアヴァターラなのかもしれないのだ。
バイシの踊りは単語のように分節されており、収集し分析すれば、自然言語として理解可能な豊かなパターンが浮かび上がる。今のところ、私たちが理解できるのはその言葉の形式だけだ。内容はいまだ深い謎に包まれている。それでも言語構造の共通性は、ヒトとケモノが完全なる異種ではなく、共通の祖先から分かれた存在である可能性を示唆している。
私たちと彼らの関係は、市壁の内と外でモリの資源を奪い合うだけのものではないはずだ。バイシのぎこちなくも親しみを感じさせる踊りは、ケモノとの相互理解という淡い希望を私たちに抱かせる。