ケモノのアヴァターラは出現のたびに異なる姿や身振りを呈する。その中で最も見分けやすいのが、レイシという存在様態だ。おそらく、レイシにはケモノたちの宗教性が最も色濃く現れている。その激しく反復的な踊りは神懸かりに似た状態を示し、どんな解釈も、意思疎通の試みも無駄に終わる。
ケモノたちの信仰とは、一体どのようなものだろうか。その内実を推し量るための最大の材料は、レイシの装束だ。その図柄は一見ただの斑模様のようで、実は、モリに棲む何種類もの動物の姿を合成したものだということが分かっている。
“合成”。それこそが、彼らの信仰の核なのではないだろうか。アヴァターラは複数個体の協力によって成立するとされるが、きっと、それに関わるのはケモノだけではない。モリの四つ脚や六つ脚、木々やキノコのつながり、水や風の流れ。彼らの装束は自然のあらゆる関係性の具現化である──そう考えるのはあながち行き過ぎでもないだろう。